春木篤
春木レディースクリニック 院長。大阪府堺市生まれ。山梨大学医学部卒業後、1995年から横浜市立大学医学部附属病院に勤務した後、2006年からIVFなんばクリニック医長、2009年からIVF大阪クリニック副院長を経て、2013年5月大阪・心斎橋で開業。地元大阪で多くの人を妊娠へと導く一方、学会発表や論文も多い。趣味はジョギング、筋力トレーニング、スキューバダイビング。
https://www.haruki-cl.com/

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INTERVIEW

春木レディースクリニックは不妊治療の専門クリニックとして、これまで多くの女性の皆さんと向き合ってきました。そしてまた、妊娠をされた女性の笑顔に、私たち自身も幸せを感じ、支えられてきました。 少子化が社会問題となっている現代ですが、私は常々、「妊活や育児中の女性でも活躍できる社会があって初めて少子化が解決できる」と考えています。どのような境遇におかれていたとしても、すべての女性はこれからの社会になくてはならない活力だからです。 今後は、女性の働き方や生き方に至るまで、まだまだ社会がやるべきことはたくさんあるでしょう。我々もそんな女性たちの一助となれるように、"働きながらであっても、短期間で結果が出せる不妊治療"を提示し続けていきたいと思っています。

春木篤

働く女性のプライオリティを尊重した治療戦略

不妊治療を行っていくうえで非常に重要なことは、「妊娠しないことの原因をどこまで追求できるか」という姿勢を貫くことだと思います。単純に、「この方は年齢が高いから妊娠できない」という先入観は、本当の原因を探る探求心を失わせるだけではなく、治療を単調なものにさせる可能性も孕んでいます。実際には年齢が高くても妊娠している方は数多くいますし、年齢だけが単一の不妊原因であるはずはありません。当クリニックに足を運ばれる女性の中には、他院でなかなか結果がでなかった方々もたくさんいらっしゃいますが、転院後に新たに検査をしたことによって不妊の原因がはじめて判明し、その原因に応じた治療を実施することによって、すみやかに妊娠されるケースも少なくはありません。逆に、原因究明を怠れば、最初から最先端の治療を選択しても、そう簡単には妊娠に至らないのです。そして治療を提供する側が「仕事よりも妊活が優先でしょう」というプライオリティと、「ともかく最先端の治療を」という偏ったストラテジーを持っていたならば、働く女性が活躍できる時間がどんどん削られる一方で、なかなか妊娠に至らないという悪循環に陥って、挙句の果てには仕事のために妊活を断念せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれないのです。
当クリニックでは、駅からのアクセスの良さに加え、平日は午後7時まで診療をしていますので、お仕事をされている女性でもそれほど負担なく通院されていると思います。そして、「エビデンスにはじまり、ナラティブに終わる」というコンセプトのもと、まずは卵巣年齢の評価や卵管造影検査、精液検査などの不妊原因の究明から開始します。その上で、患者様のプライオリティを尊重し、おふたりに合った治療法を選択していきます。働かれている女性にとって仕事と治療が両立できるかどうかは非常に重要な問題ですから、諸検査で大きな異常がなく過去の不妊治療歴もなければ、最初は時間的な制約の少ないタイミング療法や人工授精などの一般治療から開始するようにしています。不妊原因にもよりますが、当院では過半数の女性はこのストラテジーで妊娠されていきます。仕事をされている女性は、受診する日程が限られてしまう場合も多々あります。我々はまず患者様の通院可能な日程を確認してから、排卵誘発や人工授精のスケジュールを逆算しています。漠然と予想するのではなく、現在の卵胞径やホルモン値、今までの排卵までの日数や排卵誘発剤への反応性などを参考にしながら解析していきます。働く女性の時間的な制約は、我々に与えられた治療を成功に導くためのハードルであると捉えています。その厳しい制約の中で、早く結果を出してこそ不妊治療のプロフェッショナルであると我々は考えています。

女性目線での高いホスピタリティを目指す姿勢

春木篤 当クリニックでは、最初のお子さんを出産後も、第2子、3子と引き続き治療を受けられる患者様が多くいらっしゃるため、お子様連れでも安心して治療に専念できるよう、保育士が常駐するファミリールームを設けています。しかし不妊治療で初めて来院された方にとっては、お子様が居る環境自体がストレスになりかねません。そうした点にも配慮し、ファミリールームをエントランスが異なるエリアに設けることで動線を分け、ストレスなく女性を迎え入れる環境を整えています。また、診察時の医療クラーク体制や2診制、院内LANを用いた速やかな情報伝達、自動精算機の導入など患者様をお待たせしないシステムづくりに力を入れています。現在、当クリニックには50名の女性スタッフが在籍していますが、患者様からの声や現在のシステム上の問題点などを毎月開催される会議で話し合っています。中でも、新たな患者様へのサービスの導入については、スタッフ全員で女性目線での検討を重ねながら、より良いサービスを数多く提供できるように取り組んでいます。
こうした取り組みは患者様へのホスピタリティを高めることを目的にしていますが、診療においても非常に重要な意味を持っているのです。我々の治療分野では、患者様と良い信頼関係を築けるかどうか、患者様が気持ちよく通院して頂けるかどうかが、治療成績にも影響を与える可能性があります。信頼して頂けることで、新たな治療の提案に対しても前向きに考えて頂けることができ、おふたりの幸せにとって重要なターニングポイントに直面したときもスムーズに次の段階へ進めることが可能となります。また恒常的な精神面での安定もこの分野においてはとても重要であると考えます。高いホスピタリティに裏打ちされた信頼関係と精神的な安定があればこそ、予期しない悲しい結果が発生した場合でも我々と共にそれを乗り越えることが可能になるのだと思います。

患者様とスタッフによる女性としての幸せの連鎖と循環

春木篤 私は常々「人々を幸せにすることは自分をも幸せにする」と提言しています。その観点から、我々は患者様を幸せにすることを第一義的に考えています。そのためには高いホスピタリティだけでは十分ではありません。不妊治療のプロフェッショナルとしての技量が、私を含めた医師だけでなく、胚培養士や看護職から医療事務まですべてのスタッフに求められます。しかし、高い技量というのは当然ながら習得するまでに長い時間を要します。我々は新しく入職したスタッフに関して、数か月間は勉強会を実施しています。その後に到達度試験を実施して習熟度を客観的に評価し、十分なレベルまで到達できなかった場合には半年後に再試験を実施します。スタッフ個々の専門的なスキルと知識力が治療成績にも大きく影響する分野ですから、常に高い知識の維持と確かなスキルアップをはかり、どこよりもプロフェッショナルとしてのプライドを持って患者様と向き合っていきたいと考えています。スキルアップしたスタッフの小さな機転が尊い生命の誕生に寄与したとすれば、スタッフも達成感を感じるはずですし、自分に自信がついてくるものだと思います。それを繰り返していけば、スタッフ自らの幸せにも一歩ずつ近づいていくことでしょう。
そして冒頭の提言に従えば、私は「患者様とスタッフを幸せにする」必要があります。日々努力して頑張ってくれているスタッフに対しては、社員旅行を兼ねた忘年会など福利厚生を充実させるように心がけています。当クリニックは有給消化率も高く、スタッフがある一定の基準にスキルアップした場合には、その達成したスキルに応じた昇給システムも細かく設定しています。また、求めがあればスタッフ自身に対しても治療を行いますし、産休や育児休暇が十分に取得可能な職場環境が保持できるように日々努力しています。スタッフ同士がお互いに助け合うという意識を持つことは必要不可欠ですが、万が一欠員が生じた場合でも、カバーできるだけの充分な人材の確保に努めているからこそ、スタッフの幸せについても応援できる体制が整っているのだと思います。
妊娠が成立したときや卒業するときの患者様の笑顔が我々スタッフの笑顔や幸せにも繋がり、そして我々スタッフの笑顔、祝福が患者様にも伝わり、生まれてくるお子様を含めた患者様のご家族もまた幸せになる。そして、「また次の子もお願いします」とクリニックに戻ってこられたときには、自然とスタッフも笑顔になって幸せを感じる。それらは常に循環していくものであり、究極の幸せの連鎖であると思います。