澤田貴司
1957年生まれ、石川県出身。上智大学理工学部卒業後、1981年に伊藤忠商事に入社。1997年ファーストリテイリングに入社し、翌年取締役副社長就任。2005年にリヴァンプ設立。2016年9月より現職。
https://www.family.co.jp/company.html

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。

INTERVIEW

ファミリーマートは1973年の1号店開店から今日まで拡大を続け2016年にはサークルKサンクスと経営統合果たし、新たな成長のステージを迎えました。全国に約18,000店舗を展開し、店舗で働くストアスタッフは約20万人を数え、年間での売上は3兆円規模に達しています。それだけ大きな組織になりましたが、何よりも重要なことは店舗数という「量」だけでなく、商品やサービス、接客など店舗における「質」も追及することだと考えています。昨今、われわれコンビニエンスストアを取り巻く環境は、同業他社との競合だけでなく、ネットやスーパーなど業態の垣根を超えた競争も激化しており、どんなに規模が拡大しても、お客さまが求める質が伴っていなければ、あっという間に淘汰されてしまいます。今後は社会の変化をとらえた成長戦略と、それを支える人材戦略をどう描くかが競争に勝ち抜く要素となってきます。

澤田貴司

質の向上に必要とされる女性活躍

当社の女性社員比率は全体の約12%、女性管理職は2%程度と少なく、これは大きな経営課題だと認識しています。これまで当社は、数々の経営統合を繰り返し、全国各地で事業規模を拡大してきました。世の中のニーズに瞬時に対応していくためには、それだけの勢いが必要と感じていたためです。しかし言い換えれば規模を拡大していくためにハードワークに頼り、人材の多様化についてはきちんと手を付けてこられなかったということは素直に認めざるを得ません。社会構造の変化に伴い増加している働く女性やシニアの方など、多様なお客さまのニーズにお応えできる高い「質」を実現するためには、女性社員の雇用拡大はもちろんのこと、女性リーダーの育成など、組織の意思決定のプロセスに多様な人材がかかわるような仕組みづくりが重要になってくるでしょう。来店されるお客さまは多様化しているのに、われわれが男性ばかりの会議で商品やサービスを考えていても、受け入れられるわけがありません。まさに今、ファミリーマートは、質の向上を実現するために、組織や企業文化から徹底的に見直しているところなのです。

組織の在り方を変える、ダイバーシティ推進室

澤田貴司 2017年3月に、「ダイバーシティ推進室」を立ち上げました。まずは女性活躍推進をテーマに、リーダーである経営層と従業員の意識改革をトップダウンとボトムアップの両面から同時進行で断行しています。推進室のメンバーは常にフィードバックを繰り返しながら、非常に良い"流れ"を社内に持ち込んでくれています。今後はその成果が様々な場面で表れてくると大きな期待を寄せています。そうした中で「2020年度までに女性社員比率を20%まで引き上げる」という数値目標を掲げました。チャレンジングではありますが、それを実現すること自体はさほど難しいことではないと考えています。しかし、単に数字の上で女性社員比率を引き上げただけでは意味がありません。ダイバーシティを推進していくことの意義を社員一人ひとりが理解して、納得し、浸透させていくことが何よりも重要です。そして、それらをいかにサステナブルに成長させていくことができるかが今後の鍵だと考えています。そのためには時に強引にでもルールを見直す必要もあるでしょうし、人材教育の在り方も見直していかなければならないと感じています。

女性が活躍できなければ、女性視点は生まれない。

澤田貴司 ファミリーマートのお店に来店されるお客さまの半数は女性の方々です。また、店舗で働くストアスタッフさんは非常に優秀な女性が多く、また様々な国籍の方々も従事していただいています。つまり、現場ではもうとっくにダイバーシティが浸透しているということです。それにも関わらず、組織のマネジメント層や管理職には女性が少ないとなれば、それを是正していくのは当然のことです。女性顧客のニーズを掘り下げるためには、女性の意見を取り入れる。そして、一人の意見から物事を判断するよりも、多様なメンバーから出た意見の中から物事を判断する方が圧倒的に正しい方向性を導き出せると思っています。私は、多様なアイデアや意見が飛び交う会議は大好きですし、自分が持ちえていなかった意見を出してくれる社員には感謝しかありません。たった一つの意見が、巨大な組織の改革や顧客の満足度向上に繋がることが往々にしてあるわけですから。