若月貴子
1969年生まれ。大学卒業後、西友に入社。経営企画や海外法人担当を歴任した後、30代後半で経営コンサルティングファームの経営共創基盤に転職。その5年後の2012年、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンに入社。管理本部長として経営企画や財務・総務・人事など、バックオフィス全般を担当。2017年4月より同社の代表取締役社長に就任。現在に至る。
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※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。

INTERVIEW

私は社会人としてのキャリアをスタートさせてから、女性として働くということがキャリア形成の足かせと思ったことはありません。非常に人や職場といった環境に恵まれてきたのかもしれません。しかし周囲を見渡せば、まだまだ女性活躍の余地はあるにも関わらず、悩んだり苦しんだりしている方もたくさんいます。だからこそ私自身が、経営者として女性活躍という事実を提示していくことはとても大事なこと。これからも女性活躍が当たり前の社風になっていくように、多様な取り組みを全力で続けていきたいと思っています。

若月貴子

時間や場所に選択肢を与えていく

当社に在籍する約130名の社員の中で、女性の割合は全体の半数近く。我々のように飲食業を営む企業にとっては、サービス精神の高い女性の力は必要不可欠です。とくに店舗の現場などにおいては、雇用体系を問わず多くの女性が働いています。
その中で当社が注力しているのは、結婚や出産、育児などのライフステージの変化に合わせた働き方をさらに多様にしていくという取り組みです。人生において様々な変化を伴う女性自身に、働き方の選択肢をもっと提供していけるように、そのための仕組みづくりとサポートを積極的に行っています。
たとえば正社員には、地域限定社員という雇用形態を用意し、働きたい地域だけで勤務できる仕組みづくりも制度化しています。また、多くの企業でも取り入れているチャイルドケア制度を含む時短勤務制度を導入することで、ライフステージにあった働き方も用意しています。時間や場所が不安定要素になってしまうと、働きながら育児や介護を並行していくことは難しいことです。そうした課題を解決するためにも、時間や場所をご自身で選んでいただくという働き方へシフトしていければと考えています。
またアルバイト雇用の方でも、子育てが一段落した際に「フルタイム勤務をしたい」という要望も多く聞かれます。そのようなケースでは正社員登用を積極的に勧めていますし、その数は年々増え続けていくでしょう。

女性リーダーの推進に向けて

若月貴子 飲食・小売業界は他業種と比べ、女性活躍が進んでいる業界だと感じています。しかし、マネジメント層における女性の割合はまだまだ少ないのも事実。今後は管理職やリーダー、マネジメント層への登用をもっと推進していければと考えているところです。
もちろん女性だからという理由だけで登用するわけではありませんが、女性のマネジメント力はまだまだ不足しているように感じていますから、今後も引き続きリーダー育成のための取組みに注力していく必要があります。
例えば将来的に「マネジメントがしたい」というキャリアプランを描く女性が、ご自身のライフステージの変化を理由にキャリア形成を諦めてしまうのはもったいないこと。
当社では、バリスタコンペディションという世界大会を毎年開催していますが、その時の日本代表になった女性が名古屋市内で店長として勤務していました。現在彼女は出産を機に育休制度を利用していますが、復職後も時短制度を利用し店長として働く予定です。能力さえ伴っていれば、誰もが同様にチャンスを与えられるべきで、そのためには常に多様な働き方の選択肢が必要だということです。

女性は真面目、だから冒険も必要

若月貴子 女性は真面目な方が多い印象があります。ライフイベントを一つの分岐点と考え、自分なりに時間軸を計算してキャリアプランを考えている若手も増えています。
私自身はそれとは逆で、若い頃は「与えられた仕事に対して期待値以上のことをやろう」と自分に課し、とにかく目の前のことに集中して努力を続けていたように思います。
悪くいえば無計画でその場しのぎのように聞こえるかもしれません。
しかし後先考えずに集中して取り組んだり、冒険したり、時には足を踏み外してみることも長いキャリアの中では大切なのではないでしょうか。
ライフイベントを迎えても、冒険して足を踏み外すことがあっても、女性がたくましくキャリアを築いていけるよう企業としてサポートしていくことも不可欠だと思います。
柔軟な思考を持ち、自分にあった働き方を見つけて活躍する女性が輝ける社会になっていけたらいいと願っています。