稲田朋美
1959年生まれ、福井県出身。81年早稲田大学法学部卒業。85年弁護士登録。2005年第44回衆議院議員総選挙福井1区から出馬し、初当選を果たす。12年第二次安倍内閣にて行政改革・公務員制度改革・クールジャパン戦略 ・再チャレンジ・規制改革担当大臣として初入閣。14年自民党政務調査会長。16年第三次安倍内閣にて防衛大臣を務める。17年第48回衆議院議員総選挙で5選。18年から現職。19年自民党内の他の女性議員らとともに新たな議員連盟である女性議員飛躍の会を結成し、共同代表に就任する。
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INTERVIEW

弁護士としても政治家としても、ずっと一貫して自分がやりたいと思ってきたことは、「日本を世界から尊敬される国にしたい」ということ。日本を本当の意味での主権国家にするということに取り組みつつ、女性、障害者、LGBTなど、社会的マイノリティと呼ばれる方たちが生き生きと自分らしく希望を持って暮らせるような、そんな多様性のある社会を作りたいと思っています。

稲田朋美

女性が働くということ

私が学生の時は女性が職を探すというのも大変で、特に4年制大学で下宿している女子学生の働き口というのはものすごく少なかったものですから、最初は法律事務所の事務員さんになろうかなと思っていたんです。でも、だったらやっぱり自分で弁護士になる方がいいなって。司法試験は男女平等なので、働くとしたら試験に通るというのが一番の早道だと思ったんです。ところが、主人も同じ大学で、同じ年に試験に受かって司法修習生になったのですが、同じ条件でも主人の方には検察官や裁判官、弁護士事務所などたくさんのお誘いがあるのに、私にはまったくお誘いがなくて。でも、当時の女性司法修習生ってみんなそんな感じだったんです。「そんなに勉強して、お嫁に行けなくなってどうするんだ」と普通に言われるわけですよ、周りからも。だから私もそれで腹が立つというよりは、「確かになぁ」って。弁護士になるには自分で売り込むしかなかったので、大阪で最も歴史のある法律事務所に電話して面接を受けたのですが、当時60代のボスが「あなたはまだ若いから、自分の事務所では女性を雇ったことは一度もないんだけども、5年間結婚しないんだったら来てもいいよ」って。今の感覚で考えたらおかしいでしょ? でも、私も「それでもいいです」っていって勤めたんです。そういう時代だったんですね。それを思うと今は、本当の意味でちゃんと平等になっているかどうかは別として、恵まれているとは思いますね。

自分の意志で自由に選べる社会

稲田朋美 総理自ら女性が活躍する社会を作ろうといって法律ができたり、政治の分野における女性参画が進められたり、昔に比べたら非常に進歩はしていますけども、待機児童の問題や家庭内における配偶者の協力などといった意識改革に関しては、まだまだ改善の余地があるのではないかと思います。私の場合は子どもが生まれる前に独立をしたので、比較的自由に時間を使えましたが、それでも「明日の子どものお迎えをどうするか」ということが一番大変でしたから。仕事と家庭を両立する難しさは今も変わらないのだろうなと思いますね。全部を抱え込むとあふれてしまいます。完璧に全部やろうと思うと、社会で活躍するのは難しい。100点満点は目指さなくてもいいと思いますよ。また、どこに力点を置くかということもあります。ずっと働きたいという人もいるでしょうし、家事や子育てに専念したいという人も、一度仕事から離れたけれどまた働きたいという人もいるでしょう。だから、いろんな生き方が選べるっていうことが重要ですよね。わがままと言われるかもしれませんが、一度選んだのだからずっとそうしないといけないということではなくて、自分の意志で自由に選ぶことができる社会、それが本当の意味でみんなが能力を発揮できる社会なんじゃないかなと思います。

すべての政治家を目指す女性たちに

稲田朋美 男女共同参画社会について、例えば管理職の何%は女性じゃないといけないというようなクォーター制を導入することには消極的なんです。ただ、理想と現実は離れていて。政府でも企業でも、義務付けるのではなく目標を立てることが具体的な政策を進めていくことにもつながると考えています。例えば女性の政治家が全然増えないということで、政治の世界でも2018年5月に候補者男女均等法が制定されましたが、それを作ったことで各政党がそれぞれ具体的な政策を進めていくわけです。自民党内にも数は少ないですが女性議員たちがいますので、協力し合ってさまざまな提言をしていきたいと考えています。

私自身も14年前に福井県で国会議員になったときは59年ぶりの女性代議士だったんです。今も福井には自民党の女性県会議員も市議会議員も一人もいないんですね。この間、党の全国幹事長会議の時に、各級の地方選挙で少なくとも一人は女性候補者を立てる努力をしましょうといったのですが、それだけでも大きな一歩と言われているくらい、今まではそういうことすらやっていなかったんです。政治の世界は一般社会以上に男性社会。女性も政治に参画するんだという意識にもっともっと変えていく必要がある。女性議員自らが「女性議員を増やしましょう」と発信していくことが重要だと思いますね。ここが変われば一気に世の中の流れが変わるはず。そして、女性議員が総裁選にチャレンジすることも重要。それを見て「自分も政治家になりたい」と思う女性が増え、女性議員が増えていく。それが私のやりたいことです。また、若手の女性議員の方々に、自分の失敗も含めていろいろとアドバイスすることができたらと思っています。地方議員も含めて、すべての政治家を目指す女性たちに。

弁護士になった時も政治家になった時も、周りからは「らしくない」と言われ続けてきたのですが、自分自身では、自分らしくありのままで選択してきた結果、今があると思っています。自分らしく生きるためには、自然体で自分がなりたいものを目指すこと。それから、目指した以上のものにはなれないので、極端に大きな夢を持つことです。今与えられたことを一つひとつ着実にこなしながら、自分の夢に向かって歩いてほしいなと思います。自分らしく生きることは女性に限らず、男性もそうですよね。LGBTの方も、障害を持っている人も。一億総活躍社会は、みんなが自分らしく、枠にはまらずに生きていける社会、それぞれが自分の夢を実現できる社会、みんなが生き生きとして、明るくて希望に満ちた社会。それが実現できるような素地を作るのが、政治の役割だと思っています。