出雲充
1980年生まれ。東京大学農学部卒、2002年東京三菱銀行入行。1年余りで退社し、2004年に米バブソン大学「プライス・バブソン」修了。経済産業省・米商務省「平沼エヴァンズイニシアティブ訪米ミッション」委員を務める。2005年、株式会社ユーグレナを創業、同社代表取締役社長に就任。微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。
https://www.euglena.jp/

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。

INTERVIEW

2017年現在、男女比がほぼ半々になりました。ここ数年6:4の割合で男性の方が多かったのですが、やっと1:1にたどり着いたのです。当社は行動指針「ユーグリズム」の一番目に多様性を掲げ、さまざまな価値観を受け入れる風土を培っています。性別や年齢、経歴などに偏りが生まれると多様性を欠いてしまう。そのため1:1の男女比は非常に理想的だと言えます。 なぜ多様性を重んじるかと言うと、生物にとって多様性が失われた状態は危険だからです。大昔に恐竜が絶滅したのも多様性がなかったからという説もあります。企業も同様に、生き残るためには違う人同士をうまく掛け合わせる必要があります。そうでなければイノベーションが起きず、新しい価値は生まれません。

出雲充

ミドリムシが教えてくれた多様性の価値

私は栄養失調の子どもたちを元気にするために、人間が必要とする栄養素のほぼ全てを含むミドリムシの食品を作りました。ビタミンCが多いミドリムシもいればカルシウムが多いミドリムシもいます。とあるミドリムシは栄養よりも多くの油を含んでいて、「これはあまり良いミドリムシではないな」と思ってほったらかしにしていました。ところが、2008年頃からバイオ燃料が注目されるようになり、その時に「このミドリムシは食品には向いていないが、燃料には向いているのではないか」と気づいたのです。今ではジェット燃料に近い油を持つミドリムシとして人気を集めています。
色々なミドリムシがいて、色々な個性がある。そんな多様性に富んだミドリムシを研究すれば色々な産業を生み出せる可能性があります。多様性は我々にとって最大の財産なのです。これは産業だけでなく会社経営にも言えることなので、男性ばかり、理系ばかりなど偏った会社にならないよう、あらゆる指標を導入して幅広い人材の採用を続けています。

制度を作るだけでは真の女性活躍は実現しない

出雲充 「企業側で制度を整えなければ女性活躍は実現しない」という意見もあります。確かに間違ってはいないのですが、単に制度だけを作るのは本質的ではありません。たとえば企業内に託児所を作れば子どものいる社員は喜びますが、独身の社員は「自分たち以外が優遇されている」と思うかもしれません。このような歪みが社内に生まれると、制度はうまく運用できないのです。
こうした歪みを作らないためには、「全員が働きやすい環境を作るために、全員で障害を乗り越えていく」という協働意識を育てる必要があります。だれかが障害にぶつかっても、全員でサポートすれば乗り越えることができる。そのためチームシップを重視し、困難を困難と思わずポジティブに打破する組織づくりを行っています。
当社ではパラリンピック選手の方が人事職として活躍しています。それを機に、今まで放置していたコンセントの出っ張りを周囲が気にするようになりました。ぶつからないように出っ張りをなくすなど、会社の環境も少しずつ変わっています。このように、制度だけを先行させるのではなく、チームシップに根ざした環境改善をし続けます。

仲間同士の差異がイノベーションを生む

出雲充 私は女性がうらやましいです。というのも、生物としては男性よりも女性の方が遺伝子が安定しているからです。寿命も女性の方が長いですよね。男性は遺伝的な欠損を抱えていて、身体的負担がかかった状態から誕生しているのです。とはいえ、会社に女性だけいればいいわけではない。筋肉のつき方から認知能力まで異なる男女が、お互いに刺激を与え合ってこそイノベーションが生まれます。スタートアップベンチャーにとってイノベーションは必要不可欠。常に新しいサービスを生み出し、挑戦し続けなければ成長できません。
ようやく男女比が1:1になりましたが、女性の研究者は少なく、いわゆるリケジョ(理系女子)の採用には随分力を入れました。ベンチャー企業ですから、大手のように高い採用費はかけられません。そこで、当社で活躍している女性にスポットを当てて、新聞や雑誌『AERA』の巻頭ページなど、多くのメディアに取り上げていただきました。「こんなに楽しそうに働いている理系女性がいますよ」と訴えかけたのです。もちろん女性であればだれでもいいわけではなく、ミドリムシが好きな女性に入社してほしいので、研究のバックグラウンドも余さず紹介しました。
これは実際に活躍している女性社員がいたからこそ実現できたこと。こうした努力の結果、女性の社員がだんだんと増えていきました。もちろん、理系だけに限らず文系の方も採用しています。これからも多様性を第一に、男女ともに活躍する会社として進化し続けます。