寿台順章
1982年生まれ、愛知県出身。家業は名古屋にある1593年建立の正雲寺。大谷大学中退後、石垣島で1年ほど生活。帰郷後、幼稚園教諭・保育士の資格を取得し、2006年に社会福祉法人栄寿福祉会に入職。08年に姉妹法人の学校法人正雲寺学園と社会福祉法人栄寿福祉会の理事長に就任。13年、グループ内にMarSolを立ち上げ代表取締役に就任。22年4月にバレーボールのクラブチーム「Viore NAGOYA」を発足。
https://www.j-j-all-stars.com/

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。

INTERVIEW

保育士の働き方を変えたい!そう決意して10年以上。マイナスの保守性を打破しながら、業界で「変えられない」と思われてきた慣習に革新を起してきました。この道(保育/教育)を諦めたくない職員たちが、ライフステージの変化にマイナスの選択を迫られることなく、活き活きと働ける環境を自負しています。今後、私の取り組みは当施設の職員だけでなく、全女性に向けた応援へと拡大していきます。そのひとつがバレーボールのクラブチーム「Viore NAGOYA」。彼女たちの活躍にご期待ください!

寿台順章

大人側にスポットを当てた「遊ぶために働け!」

名古屋市内で認可保育園7園、認定こども園1園、小学生のアフタースクール1校を運営する社会福祉法人栄寿福祉会の理事長を務める私は、2006年の入職以来ずっと当法人で働く女性たちや当法人を利用される女性たちを見つめてきました。そんな中で生まれたのが「遊ぶために働け!」という理念です。そもそも子どものために自らの楽しみやゆとりを犠牲にするべしといった圧力が、親と子、そして、家庭と保育/教育機関に好循環を生むわけがない、私はそう考えます。余裕をもって仕事と向き合い、休日は自分や家族のために時間を使い心身を充足させ、また仕事に取り組む。この循環なくして、保育/教育のクオリティは保つことができないのです。「遊ぶために働け!」とは、大人側にこそスポットを当てることで、子どもが育まれる環境を守りたい、そんな想いが込められています。
私どもの施設では約10年前から産休・育休・時短勤務制度を常態化させてきました。また、常勤の職員は入職した当日から有給取得の権利を持ちます。この業界はなかなか休みの取れないイメージもあるでしょうが、私どもでは「1人担任」でも、その日の朝に「子どもが発熱した」の電話1本で休めます。それが、うちの働き方。ルールやシステムだけじゃなく、職員皆の意識でもって成立しているのです。いわば、厚生労働省のルールブックではなく、自分たちの理念に則った労働環境なんですね。

歪な平等観が女性を苦しめる

寿台順章 私どもの施設を利用される家庭、特にママさんたちの表情を眺め続けてきた知見から、私の考えを率直にお伝えします。誤解を恐れずに言えば、女性と男性には「区別」があって然るべきなんです。男性が子宮に胎児を宿すことはできないし、母乳も出ない、これは自明の理でしょう。今のママさんたちはバリバリ働き、残業もして、職場内で闘って、帰宅して家事して育児して、そんな状況で子どもに目が届く余裕があるのか大いに疑問です。この背景には歪な平等観があります。男女雇用機会均等法以降、男性側だけに預けられていた労働の権利やチャンスが女性にも拡大しましたが、果たしてこれが“真の平等”を生んだのでしょうか。女性には女性にしか果たせない役割があることに、もっと価値・真価が置かれて然るべき。つまり、出産・育児の経験が女性ならではのスキルとして社会に充分に評価されて欲しいのです。仕事(経済活動)も家庭(出産・育児)も優劣なく社会的価値のあるものだと認められる社会こそ、真の意味で「女性躍進」ではないでしょうか。言い換えれば「女性が女性らしく、ちゃんと女性として生きられる環境をつくる」こと。極論かもしれませんが、「育休」などという制度がなくとも、ママさんとしてゆったりとのんびりと安心して働ける環境が社会に拡大すること、それこそが究極のゴールとも言えます。

「せんせいはせんしゅ」その真意とは?

寿台順章 私どもの施設に話を戻します。「子どもに関わる仕事がしたい」と決意し、保育士や栄養士などの資格を取得してきた高い志の職員たちには、あとは人的環境だけで充分。充分な休息や余暇が取れることで、子どもたちにもドシッと構えて「大丈夫だよ」と言ってあげられる本物の余裕が生まれます。子どもたちは「本物」をよく見ています。だからこそ、真に輝いて楽しんで頑張っている大人を身近に見て欲しい。そんな想いで2022年4月に誕生したのがバレーボールのクラブチーム「Viore NAGOYA」です。メンバーは皆現役の保育士や栄養士に、担任も。かつてインターハイ等で活躍し、保育/教育の仕事にも専心したい…そんな女性たちが全国から集まりました。当チームは地域リーグ優勝に向けて挑んでおり、本気でVリーグ参入を目指しています。子どもたちには「夢は2個持ってもいい」とメッセージを送りたいし、その姿をリアルで見せたい。日本のすべての女性にも、働きながら夢を追いかけてもいいんだと伝えたいんです。また、アスリートのセカンドキャリア問題にもひとつの解決を示したいとも考えています。
26歳で理事長となってから10年以上。この業界が抱える悪しき慣習を打破するため、型破りな取り組みも行ってきました。今後も地域や行政や保護者にとって都合の良いサービス業をしていくつもりはありません。保育/教育機関として曲げてはならない信念を持ち、コアな賛同者を得る中で、子どもや女性のための社会実現を果たすことが自身の役割であると考えています。