- 木本茂
- 1956年生まれ。1979年、株式会社横浜髙島屋(現・株式会社髙島屋)に入社。2006年、髙島屋横浜店副店長、2007年、新宿店副店長を歴任。2010年より執行役員新宿店長を務め、2011年には常務取締役企画本部(改革推進本部)副本部長、構造改革推進室長に就任。2014年より現任。
- https://www.takashimaya.co.jp/corp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。
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2017年現在、当社の女性正社員比率は57.4%、そのうち女性管理職比率は28.8%、有期雇用者を含めた全体の女性比率は69.2%に上ります。いかに女性のウェイトが高い会社なのかということがおわかりいただけるでしょう。当社は百貨店事業がコア事業ですが、お客様の8割が女性です。みなさんのニーズにお応えしていくためには、当然ながら女性の感性や視点を多く引き出し、事業を続けていく必要があります。2020年度までには女性管理職比率を35%まで引き上げていくという目標を置いているのも、そうした背景があるためです。しかし我々の真の目的は、数字を上げていくことではなく、百貨店そのものの質を上げていくこと。女性の雇用をさらに増やしていきながら、働き甲斐を持って取り組んでもらえる制度設計を行い、質を伴った仕事を生み出していければと考えています。
私が入社した1979年当時は、働く女性の数も今よりずっと少なく、中でも女性管理職者の数は他の業界を見渡しても皆無と言っていいほどの時代でした。しかし現代では女性が社会進出していくのが当たり前になり、女性リーダーも増え続けています。もちろん働き方は昔のままでは通用せず、見直さなくてはいけない取り組みはたくさんありました。当社も長い歴史の中で、様々な制度改正を繰り返してきたのです。
たとえば産休や育休後も働き甲斐のある環境を提供できるように、再雇用制度や育児勤務制度などはずいぶん早くから取り組んでいました。また2017年現在では、勤務体系だけを見ても8つのプランを用意しています。短時間勤務やフルタイム勤務を併用する勤務体系をはじめ、より幅広い働き方の選択肢を設けることで、働く人の意向や家庭の事情に合わせた勤務体系を働く側に選んでもらえるようにしています。
そのほかにも直近の取り組みでは、横浜店で日曜日限定の臨時保育を設置。これは2017年の11月と12月にトライアルで行ったものですが、実際に育児勤務者の方々の声を反映し、実施したものです。我々の事業にとって日曜日は繁忙日に当たりますが、その一方で、「日曜日は保育園が閉まっているため勤務に入りづらい」という働く側の実情もありました。そうした中で、育児にも気を配りながら働いていただける環境をつくろうと考案されたのが、臨時保育の設置だったのです。育児勤務者のお子様約20名にご利用していただき、大変好評を得ることができました。今後も他店で展開していくべきかどうか、様々なケースを想定しながら検討させていただいているところです。
当社が様々な制度設計を行っていく中でとくに重要視していることは、導入したら終わりということではなく、時代の変化に応じて検証を何度でも繰り返し、時代に合わせた制度改正を重ねていくこと。現状の働き方が正解だと思って満足してしまっては、サービスや仕事の質を高めることにも繋がらないと考えているのです。
そうした様々な取り組みが評価され、2016年6月には厚生労働大臣認定の【えるぼし】という制度において、女性活躍推進に関する取り組みの実地状況が優良な企業として最高ランクの認定を受けています。また、2017年12月には内閣府による「女性が輝く先進企業表彰」において「内閣総理大臣表彰」を受賞しました。外部からそのような評価をしていただけるということは大変喜ばしいことではありますが、それは何より、従業員が働き甲斐のある職場をつくっていきたいという目的があった上での結果です。今後も慢心することなく、取り組みの改善を続けていきたいという思いです。
企業としては、性差に関係なく優秀な人材を雇用していきたいというのが当然の真意ではありますが、その中でも非常に優秀な女性の方が多いなという印象を持っています。またここ数年は、外国人の雇用も徐々に増えてきており、女性活躍だけでなく、よりダイバーシティを推進していく取り組みに注力していきたいなと考えております。そうした多様性はいずれ、当社にとっても大きな活力となるでしょう。
たとえば2018年に25周年を迎えるシンガポール店や中国・上海店、2016年に出店したベトナム・ホーチミン店、2018年にオープン予定のタイ・バンコク店など、当社はグローバルな事業展開を続けているわけですが、当然ながら海外の現場では日本人の従業員はわずかで、ほとんどがネイティブの従業員になります。だからこそ大切なことは、日本人の考え方を押し付けるのではなく、その地域や店舗に合った意見を多様に取り入れていくこと。また国内事業においてもインバウンド需要が急成長しておりますが、そこにも日本人の考えに基づいた施策だけでなく、様々な意見を取り入れる寛容な考え方が必要になっていきます。今後も女性活躍をさらに推進していきながら、"高島屋らしさ"を追求していきたいと考えています。