三佐川恵美子
大阪芸術大学美術学科を卒業し、大阪市内の公立中学校で美術講師として勤務。結婚後退職し、家業の運送業を手伝いながら絵画公募展などに応募。産経新聞社全日本アートサロン絵画大賞展優秀賞。そごう百貨店絵画コンクール特別賞。他多数受賞。2015年に、ひかり倉庫株式会社代表取締役に就任し、2016年には父親の事業を一部引き継ぎ、ひかり物流株式会社を設立。2017年に、ひかり物流株式会社代表取締役に就任し、2021年ひかり物流株式会社取締役副社長に就任。2022年にはグループ会社株式会社田島運輸代表取締役に就任。同年、大阪府トラック協会の情報誌に毎月4コマのフィクション漫画(トラガールひかりちゃん)を掲載中(ペンネーム:たぁちゃん)。代表の戸川が士業として4コマとコラボしての法的コメントも掲載中。同年、自社のインスタにノンフィクション(社長継いでみた)の4コマ漫画を毎月掲載中で、日本大学商学部秋川ゼミ物流ジェンダー班との交流も開始。
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※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。

INTERVIEW

近い将来、女性だけで運営する運輸会社を設立してみたいと考えています。女性が働けない状態を減らし、運輸業界をリードしていける女性のための運輸会社です。そこから巣立っていったトラガール(女性トラックドライバー)が他の会社に移っても、トラガールイズムを業界全体に拡大して行けるような、そんな未来を想像しています。現状は女性が少ない業界だからこそ、女性活躍のビッグチャンスが眠っている…、働きたい女性の夢が叶う業界を目指しています。

三佐川恵美子

女性ドライバーの就業割合は2%程度

女性ドライバーを採用してから顕著に現れた変化が、事故数の減少だったんです。「体調どう?」「無理しないで」といった女性ならではの声の掛け合いが、双方を労わり合う社風へと昇華した結果だと思われ、私にとっても思いがけない発見でした。
当社は冷凍・冷蔵食品を中心に2t~4tトラックをルート配送する運輸企業。父の代から約40余年、近畿圏から全国に「物」を運んできました。私が事業の一部を継いだのが2016年のこと。運輸業界のことも会社経営にも初心者マークの自分には、幅広い方々の支えと助力が必要と切に感じ、男女の区別など特に考えもせず、ご縁があった方々を共に働く仲間に迎え入れ続けた結果、図らずとも女性ドライバーや女性社員の多い運輸会社となったのです。現在、役員である私の他に経理や労務に整備といった責任者や運行管理者も全てが女性。長く男性社会と言われ続けたこの業界において、かなり特殊な存在であると自負しています。そして今、トラガール(女性トラックドライバー)の活躍が各方面から注目もされる企業となりました。現在、流通業界において女性ドライバーの就業割合はわずか2%程度。私自身もトラックに乗り配送現場に赴くことがあるので、この仕事が女性に不向きであるとは思えません。では、何が運輸業界への女性参入を阻んでいるのでしょうか。

男性社会だと言われてきた運輸業界だからこそ…

三佐川恵美子 運輸業界に限らず、女性社員を雇用するにあたって妊娠・出産・育児は避けられない課題です。私自身が3人の子育てと仕事を両立してきた立場から言えることは、「育児」は絶対に1人ではできない、夫婦2人でも大変だということです。家業に従事する私の場合は、時に子育てを優先できる環境に大きく助けられました。この経験から、子育てや介護といった家庭内での役割比重の高い社員には、ある種の『実家感』でもってのフォローが欠かせないと考えています。「子どもの運動会で…」「親を病院に連れて行く…」といった理由で気軽に休みが取れる体制である他、育児休暇制度の法令基準設定は当然に、企業型託児所や保育園との連携や、子連れ面接OKなど、様々な取り組みを推し進めてきました。渋滞に巻き込まれた女性ドライバーの代わりに、保育園までお子さんをお迎えに行ったこともあります。制度やシステムだけではなく「気持ち」が頼れる会社であることが要なのです。会社が助け、周りの人が助け、いずれは社会全体が1人を助ける。そんな先行きを強く後押しし、この運輸業界から社会へと「寛容」への機運を高めていきたい、それが私の使命なのです。男性社会だと言われてきた運輸業界だからこそ、変革には大きな意味があるのだと確信しています

女性活躍は「寛容な社会」を推し進めるトリガー

三佐川恵美子 このような当社の取り組みを広く知っていただくのにトラガール(女性トラックドライバー)は欠かせない存在です。先述の通り、当社では女性ドライバーの採用が事故の減少に作用しました。それだけでなく、女性が運輸業界で活躍する実績は、この業界で働いてみたいと思う方たちの心の障壁を下げて門戸を広げる役割を果たします。屈強な男性のみが重用されるイメージを変換し、幅広い方たちが働ける「寛容な社会」を推し進めるトリガーともなりえるでしょう。
現在、燃料費の高騰に伴う配送料圧迫のしわ寄せが運輸業界を直撃しています。かつて創業者の父が「わしらが運ばんかったら、店に商品は並べられない。災害時にも物資を届けられない」と私に言ったことがありました。だからこそ、配送料の値下げを迫られながら、身を削りながら、それでも私たちは日本の流通を支えています。自動配送などのAIが発達し、人の手を介さなくとも配送が可能となる未来のその日までは、この国の流通を止めるわけにはいかないのです。男性だけでなく、女性のトラックドライバーが増えることはこの業界の希望です。また、運輸業界だけの問題ではなく、業界を飛び越えて様々な分野の女性と共に力を合わせていければ、この現状をより強い力で打開することができるのではないかとも考えています。