永山治
1947年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学商学部卒業後、1971年に日本長期信用銀行入行。1978年、中外製薬に入社。その後、開発企画本部副本部長、常務取締役、代表取締役副社長などを経て、1992年より代表取締役社長に就任。1998年から日本製薬工業協会会長を務め、2012年3月から現職。
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INTERVIEW

私が中外製薬に入社した1978年当時は、医薬品業界全体が男性社会だったと言えるでしょう。 しかし、女性の社会進出意欲の高まりと相まって男女比は大きく変化し始め、大学の薬学部などにおいても徐々に女性比率が増えていくようになりました。現在では当社全体の26%程度が女性の社員ですし、今後も間違いなくその比率は高まっていくと予想しています。これまでは女性が個々のポテンシャルを発揮する場が少なかったように思いますが、当社が現在加速させているグローバリゼーションの中で、キャリアアップしていく女性の姿を一人でも多く見ることができればと思っています。

永山治

女性に対する社会の期待値

当社の強みは、画期的な新薬を世の中に提供していることです。そして、そこに国境はありません。我々が日々対峙しているのは、広大な市場を抱えたグローバル産業なのです。2002年にスイスの製薬会社であるロシュと提携し、グローバルなネットワークをより強固なものにしました。
特に外資系企業では、女性活躍は昔から当たり前にあるカルチャーでした。もともと女性はきめ細やかな対応に秀でた方が多いように思いますし、かゆいところにも手が届く。協調性や正確性にも高い能力を発揮する方が多いと感じます。また入社式後の懇親会など、私自身が直接触れ合うような場でも、女性は男性に比べて物怖じしない方が多い印象もあります。
そのように沢山の実例があるわけですから、女性に対する社会の期待値というのはとても大きなもの。あとは女性の皆さんがご自身に見合った活躍の場を見つけ、実際にどんな一歩を踏み出すか、一人ひとりの意識醸成が問われているのかもしれません。

女性のキャリアアップを図るために

永山治 しかし当然ながら、我々が会社として女性活躍のために行うべきこともあります。特に当社では、業界内でも女性管理職登用に積極的で、現在は女性管理職の割合が全体の約11%を占めています。今後も時間の経過とともに増えていくでしょう。
そして、女性がキャリアアップしていく上で会社が整えるべき点は、やはり産休など、女性にしか経験し得ないライフイベントへの対応です。当社は産休や育休後の復職率がほぼ100%に近い数字を保っています。また、転勤が多い営業職では、たとえば結婚後に居住地を移る場合においても、配偶者との同居が可能な勤務地へ転勤してもらうサポートプランを用意するなど、ライフイベントによって仕事が継続しづらくなるという環境を少なくすることに注力しています。
子育てには、男性側の協力も必要不可欠です。そのため男性にも育休を積極的に取得していただき、よりフレキシブルに働くことができる配慮を徹底するようにしています。

ロールモデルを生み出す中外製薬の進化

永山治 また、女性のキャリア形成プランを考えるためには、人材教育の在り方も問われます。私は以前からタレントマネジメントという考え方を取り入れていて、個人を多様な角度から評価し、その人に見合ったキャリアを積んでもらいたいと考えています。
こうした考えは男性にも同様に言えることですが、今後は女性もキャリアアップしていくことで、女性活躍におけるロールモデルをどんどん増やしていきたい。そのため、社内では女性リーダー育成のための研修や、ロシュグループ内の人財交流への派遣など、積極的に女性の育成機会を設けています。グローバル化の中でのキャリアアップも、女性に積極的に経験していってほしいと考えているためです。
日本は人口が減少傾向にある国の一つですから、そうした観点から見ても女性の社会進出は欠かすことはできません。戦力としての女性が求められているのだと思います。今後は社会全体でダイバーシティが促進されていきますし、"先導者たれ"という精神で自身の意見を主張し、気概を持った人財であることがリーダーに求められていく条件になっていくでしょう。女性の多様な活躍の在り方を、当社の中で積極的に生み出していくつもりです。