- 南代鮎美
- 1968年生まれ、東京都出身。90年、大手美容関連企業に就職。企業の店舗運営・企画営業・コンサルティング・人材育成・化粧品開発を経て98年、独立しグラツィアを設立。エステ・ヨガ・コスメなど美容分野で事業展開している。
- https://www.grazia.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。
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育児時短制度100%を達成してから約5年が経ちます。その間、当社全体の業績は3倍に上がっています。これは、社員の稼働時間と会社業績に相関関係が成り立たないことの証左と言えるでしょう。では、何が当社の業績を支えているのか?その答えは「女性にとって長く働きやすい」仕組みと環境づくりにあります。女性社員の幸福を追求することは社会全体の幸福にも通ずる、私はそう信じています。
私ども株式会社グラツィアは「ひとり一人と社会を美しく」という理念のもと、ヒト幹細胞コスメ「direia」の製造・販売(全国6000店舗に導入実績)や美容製品のOEM製造、美容機器マシン製造販売やコンサルティング事業に、エステ・ヨガスタジオ運営やコスメショップ運営等を展開しています。女性社員が90%となる組織体制で、現在は27期目を迎えています。これまで、社員の成長なくして企業の発展はないという考えのもと、女性社員が長く働ける環境と仕組みづくりに注力してきました。理念の浸透と共有を最重要視する当社にとって、実地の中で理念を体得してきた社員は財産なのです。
今年の初め、製造事業のトップ(女性)が産休/育休に入りました。彼女のポジションはスッポリと抜けた形になります。ところが、事業利益は下がるどころか5倍に上昇している。このことが象徴するように、当社では女性社員がライフステージの移行を躊躇なく選び取れる仕組みと環境が整備されています。例えば、産休/育休の取得によって役職や報酬が下がるといったことはありえません。また、育休からの復帰で時短勤務になるのであれば、短くなる勤務時間で実績を挙げたい社員と、それに応じた業務フレームを構築する会社側との得失は一致するのです。時短勤務だから閑職に追いやるなどといった人財の浪費は、当社にとっては損失でしかありません。なぜならば、これまでに彼女が体得した理念とスキルこそが、私どもの発展の糧だからです。
社員のライフステージの移行に「会社側が対応する」発想を当社では常態化させてきました。キャリアパス制度もその考えを根底に構築されています。例えば同じエステシャンでも技巧に特化する社員がいれば、カウンセリングに特化する社員もいる。社員ひとり一人が自身の能力を最大限に活かせる分野で研鑽を積んでいく制度です。これにより、サービス全体のクオリティが磨かれれば、お客様の満足度も高まります。社員のキャリアパスを担保することとユーザーの満足を高めることが同義であることの証です。専門性高く社内キャリアを積んだ社員は産休/育休を経て、時短勤務を始めても当社の力なのです。もちろんFA制度等でまったく異なる分野への挑戦も歓迎しています。ライフステージの移行とキャリアパスの見通しの双方に展望を持ってもらうことが何よりも大切で、そのためにも「自分の意志で選べる」選択肢を会社側が構築することが要であると考えています。
巷には社員1名と稼働可能時間を生産性に置き換える考え方もあるでしょう。ですが、当社が育児時短制度100%を達成してから約5年、会社全体の業績は3倍に上がっています。つまり、問題は稼働時間ではないのです。「限られた時間の中で最大限に自身の力を発揮したい」という女性社員の願いや志しをどこまで会社側が支えられるのか?私はそこにこそ高齢化・人口減少社会に必要なパラダイムシフトと今後の女性躍進の鍵があると確信しています。
もちろん、会社側が整える仕組みと環境だけでは成り立ちません。社員サイドの主体性も対になってこそだと思います。当社社員の90%が女性であることは先述の通りなのですが、常々感じますのは「女性は力を持っている」ということです。責任感においても能力においても男性に劣ることなど決してありえません。私どものヴィジョンに「美容・健康・癒し・学びの提供を全国47都道府県に展開し、No.1を目指します。」というものがあります。健康や美容を追求すれば、すなわち健康寿命へと繋がります。健やかな身体と心は女性の自立心の礎となります。つまり、このヴィジョンこそが社会貢献の意味合いを含み、また、ひとり一人の人生を主体的で幸福なものへと導くのだと考えています。今後も世の中にとって価値ある企業を目指すにあたり、当社では女性社員の活躍が欠かせません。
「女性にとって長く働きやすい」会社への挑みは現在も継続中です。先日は会社内に託児所を設置する案が上がりました。ところが、自宅から子どもを連れていく困難さを懸念する声が届き、議論にテーマを与えてくれました。このように、育児中の女性のリアルな声が当社の仕組みや環境づくりのベースとなっています。私どもは当事者の声を聴き、女性社員の幸福を追求していきます。その先には女性顧客様の幸福、ひいては社会全体の幸福に繋がっていくのだと信じているからです。