手島由紀子
1972年生まれ、1990年短大入学。卒業後、1993年貿易会社入社。1996年渡米、2002年ボストンのUniversity卒業。2002年3月手島精管入社、2008年HULT IBS(MBA)入学。2009年卒業後、2014年手島精管社長就任。現在に至る。
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INTERVIEW

アメリカでの2度の留学経験で経営の知識を学んだ後に、自社に戻って一番に取り組んだのは「組織づくり」です。アメリカは女性の権力がパワフルで、男女限らず言いたいことははっきりと言う文化でした。しかし、当時の日本の組織では発言すること自体に勇気が必要になるシーンがすごく多かった。自分が言うべきことをはっきりと言える立場が女性にも必要だと感じ、このギャップを埋めようと少しずつ社内改革に取り組んだ結果、今では自分の意見をはっきりと言える女性スタッフが増えてきてすごく助かっていますし、頼もしく思っています。

手島由紀子

3名の女性チームリーダーを抜擢

社内の組織編成を数多く行ってきましたが、最近になってようやく納得のできる強固な組織が作れたと感じています。その中で女性のチームリーダーを3名起用しました。抜擢の理由は「能力が高いから」。男性だからとか女性だからとかはまったく関係なく、この会社に貢献してくれる人、この会社で定められた力量を発揮してくれる人がリーダーになるべきだと思っています。製造業ですので、力仕事では女性は男性にはかなわない。そういった分野の業務では男性リーダーの方が適していると思います。逆に、気の使い回し方や細かい作業などは女性の方が抜群の能力を発揮してくれており、処理も正確です。それぞれの違いを良さとして生かしながら業務にあたってくれています。いろいろなタイプのリーダーがいますが、皆、笑いながら仕事ができるような雰囲気づくりや明るい文化を作ってくれているなと日々感じています。それぞれとてもしっかりしていて、頼れる存在。そのおかげで私は思いっきり自分の仕事に集中することができています。

女性が働きやすい環境をつくる

手島由紀子 私はもともと物事をロジカルに考えることが好きなので、直属の上司や同僚、働く雰囲気など、会社全体をさまざまな指標から測り、社員一人ひとりのモチベーションを数値化しようという取り組みを行ったところ、女性リーダーの部門の満足度が非常に高かったんです。そういった意味でも、女性リーダーを配置することは、社内に良い影響をもたらしていると考えています。今後は彼女たちに社外でのプレゼンテーションを行う機会を増やしてあげられたら。多くのオーディエンスを前にプレゼンテーションをすることで、自分の考えをより自分で明確に理解できるようになるんですね。また、プレゼン後の名刺交換の機会などにいろいろ方から具体的なフィードバックをいただくことが多くて。そうすると自分の気付きにもなるのでお互いの成長のためになるんじゃないかな。そういう文化が広がれば、もっと全体的に成長できるのではないかと思っています。

そのためには、女性が活躍できるような労働環境を整えることも必要と考え、男性でも女性でも育児休暇を取れるようするなど、社内の福利厚生制度の見直しを行い、この度、厚生労働省が子育てサポート企業として認定する「くるみん認定」を取得しました。ここからさらに男性の育児休業取得率が13%以上になるなどの特例認定基準を満たせば「プラチナくるみん」、女性取締役や管理職を置くなどの認定基準を満たせば、女性活躍推進事業主として「えるぼし」企業に認定されるなどの制度がありますので、ぜひそれらの取得も目指していきたいですね。

日米の文化の違いを柔軟に融合する

手島由紀子 私自身も20歳の頃まではどちらかといえば消極的で、今のように自分の意見を主張するタイプではありませんでした。アメリカの女性たちの白黒はっきりした強さに衝撃を受けて、その影響から自分の思いを表現するスキルを身につけようと思ったのです。もちろん、日本人には日本人の良さがあります。他者の意見を聞き、他者に共感する。日本人のそういったコミュニケーション能力の高さは世界一だと感じています。日本人が持つ奥ゆかしさや協調性に、持論を展開する力が備わればさらに強くなれる。そういう人たちがもっとたくさん増えてきたらいいなと思っています。自分が置かれている環境で自分がどうするべきかを考え、そこがアメリカであればアメリカ式の決断方法を導入し、意見がまとまらなかった時は日本の「他者の意見を聞く文化」を取り入れるというように、柔軟に融合させることが大切なのではないでしょうか。まだまだ高度成長期の時代の名残があると感じることもあるのですが、もはや時代は大きく変わっているので、中小企業問わず会社の幹部の方々が柔軟な発想で、幅広く女性の起用を増やしていっていただけたらと思っています。また、一人ひとりの女性に対しては、自分の人生を「目標達成活動」だと考えてもらいたいですね。仕事に限らず、人生に目的があると「目標」ができます。小さな目標でもいいんです。日々達成感を味わいながら人生を充実させていくことが「輝いて生きる」ということなのではないかと思っています。