- 塚原月子
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ジェンダー、国籍、性的嗜好や性自認などさまざまな観点からのダイバーシティとインクルージョンの推進を目的としたコンサルティング、講演や研修などを展開しています。多様な個性を持つ個人が互いに尊重しあい、潜在力を発揮して貢献できる“インクルージョン”のある職場環境が、新しい付加価値を生むと信じて、企業や教育関係等のクライアントと協働しています。
ダイバーシティとインクルージョンの領域を専門に
女性の活躍推進を軸にダイバーシティとインクルージョンというスペシャルな領域のコンサルティングを始めることになったのは、自分自身一人の女性として仕事をしていくなかで、この領域を専門に広く課題解決にあたりたいと思うようになったことがきっかけです。 “多様性”の重要性には早くから賛同していましたが、“女性活躍推進”の必要性には懐疑的だったころもありました。ですが、女性と男性とで得られている機会などが異なるというデータと接するうちに女性活躍躍進が女性当事者だけでなく、組織経営や社会的な経済性においても、よりよい状態を生むポテンシャルが大きいことに気付き、考えが変わりました。また、経営戦略だけでなく、ダイバーシティとインクルージョンの知識があり、日本の実情と世界の潮流を理解している人が少なかったことも理由のひとつです。日本で一番、戦略的なレベルでダイバーシティとインクルージョンについて見識がある1人と自負しております。
意思決定層への参加とジェンダーレンズを持つこと
現状の課題として挙げられるのは意思決定するところに女性がいないこと。もうひとつは、さまざまなシーンにおいて今まで多くの多勢を占めてきた人の目線でしか検証されていないものが多すぎること。例えば、何か重要なリーダーシップ研修を行うことになったときに、その対象が40~50代の男性ばかり。それは本当に実力で選ばれたメンバーなのか。また研修の時間が平日の夜だったりすると、誰かにとって参加しづらい、疎外的な方法なのではないか。こういうことに誰も気付かないまま進んでいる事項が本当に多い。それを私たちはジェンダーレンズと言っていますが、ジェンダーの観点、どんな目線で見てもおかしくない状態というものを作っていかなくてはいけないと考えています。
注力すべきは当事者以外の層の変化
日本の女性活躍推進が次のステージに進むには、女性だけ、ダイバーシティマイノリティの当事者だけがいろいろなことを学び、頑張っていくのではなく、組織の構造的な問題やリーダーシップ層の考え方が変わらなくてはいけないという部分にシフトしていくことが必要ではないでしょうか。経営層はすでに理解していらっしゃる方も多いですが、中間管理職からシニアといった既得権益を持っている人々、そういった層に変わってもらうことに注力すべきです。残念ながら、女性の方もまだロールモデルが少なく、頑張れば認めてもらえるはずと空回りする頑張り方をしているところも多くあります。現実をちゃんと直視したうえで、正当な露出ができるように、私は両軸をうまくセットで進めたいと考えています。といっても少しずつ変化の兆しもあり、確実に前に進んでいると思いますし、それを感じる人が多ければ多いほど次のうねりに繋がっているはずです。
また、日本企業ではジョブ・ディスクリプションに相当するものがないという構造的な問題もあります。昇進や昇給の物差しが曖昧であること。明確な物差しを作ることは人事の仕組みの根本を変えていくことなので難しい問題ですが、大手企業では進められ始めていますので、もっと多くの企業に気付いてほしいと思っている部分です。女性活躍推進の政策は、当事者のためだけのものでは決してありません。マイノリティの視点に沿って物事を改善していくことは、マジョリティのなかで我慢していた人々のニーズにも沿うことに繋がります。女性のための女性による女性活躍推進にならないように気をつけなくてはいけないということは、伝えておきたいです。