- 魚谷雅彦
- 1954年奈良県生まれ。1977年、同志社大学卒業後、ライオン歯磨(現ライオン)入社。米国コロンビア大学経営大学院にてMBAを取得。1994年、日本コカ・コーラに入社し、社長・会長を歴任。2013年に資生堂のマーケティング統括顧問に就任、2014年より現職。中長期計画「VISION 2020」の実現に向け、改革に取り組んでいる。
- https://www.shiseidogroup.jp
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。
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企業の持続的成長のためには、性別や年齢、経験、国籍の異なる人たちが集まって発想を豊かにしていく「ダイバーシティ」の視点が不可欠です。私はその中核として、女性のさらなる社会進出・活躍があると捉えています。だからこそ当社にとって、女性の個の力を生かすための環境作りは企業義務と言えます。女性一人ひとりが大きな希望を持って活躍を続けていくためにも、その受け皿となる動きをもっともっと加速させていきたいですね。
当社では、国内のグループ社員における女性社員の割合が80%、女性リーダーは全体の30%を占めています。これは国内の他企業と比較しても多い割合かもしれませんが、まだまだ増やしていきたいと考えています。理想は、女性管理職・役員が当たり前のように増えていくことです。女性は結婚・出産・子育てで生活環境が大きく変わりますが、企業側もその変化に対応して、出社・退社時間や育児サポートなど、仕事に集中できる環境を整備していかなければいけません。それらの環境を整えることができてはじめて、女性のリーダーが育っていくものだと思うからです。女性が管理職を遠慮する理由があるとしたら、「現実的に時間がない」という意見が出てきますが、それは環境改善をすることで解消できることなのです。
また、女性が管理職を遠慮してしまうもう一つの理由を挙げるとすれば、「前例がないから・・・」という意見もあります。つまり必要なのは、マニュアルや上司の薦めよりも、身近なロールモデルの存在です。自分の身近に「あの人みたいになりたい」というモデルがいなければ、「管理職に就きたい」という意志を持ちづらいのは当然のことでしょう。
そこで立ち上げたのが、女性リーダー育成のための勉強会「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN 2017」です。男性に向けていい意味でのプレッシャーを与える存在になってもらえるよう、様々な形で勉強会を開催しています。
もちろん、それらの先頭に立って変えていくのは、グループのリーダーである私の役目でもあります。そして、私自身が率先してそうした機会をつくっていくことにより、ゆくゆくは女性社員たちの力だけでさらに大きな波を起こしてほしい。女性社員一人ひとりが、もっと自身の可能性を信じていくことも大切だと思っています。
今後、女性がさらに活躍の場を広げていくためにも、性別や年齢、キャリアの異なる個々の資質や能力、推進力をもっと重要視するべきだと考えています。かつての日本の企業は、個よりも組織が優先される時代でした。これからの時代は、その二つのバランスが逆でいいのではないかと思っています。なぜなら、お客様が多様化し、画一化できない時代だからです。SNSなどの影響で個性を強く主張する時代だからこそ、個々の社員がもっと力をつけてほしい。そして、自らの発想力を豊かにしてほしいと望んでいます。異なるバックグラウンドの人が集まって生まれる強い力は、結果的に、組織に反映されていきます。どんなに個が強くなっても、企業への帰属意識や愛着、思い入れが失われるわけではないのです。個と組織(帰属先)をつなげているのは、「何のためにこの仕事を任されているのか」「何のためにこのポジション(役職)にいるのか」「何のために誰のために、この企業はあるのか」といった理念や哲学。そうやって人は組織と繋がっています。その先にこそ、女性のさらなる活躍の場があるのだと思っています。まず5年後を見ていてください。当社には女性役員や様々な場面で活躍する女性リーダーが、今よりもっと増えているはずですから。